パリ五輪に内定した(左から)ロン、デサク、ズルロニ、ハント

クライミング初のパリ五輪内定者が誕生 スピードで優勝のズルロニ、デウィら4人【クライミング世界選手権2023】

 IFSCクライミング世界選手権(スイス・ベルン)は10日(日本時間11日)、スピードの男女決勝を行い、スポーツクライミングで初のパリ五輪内定選手4人が決定。男子は優勝のマッテオ・ズルロニ(イタリア)、2位のロン・ジンバオ(中国)、女子は優勝のデサク・マデ・リタ・クスマ・デウィ(インドネシア)、2位のエマ・ハント(米国)が悲願を達成した。

 スポーツクライミングのパリ五輪出場権がかかる最初の大会として行われている世界選手権。スピードは男女とも上位2人、すなわち優勝決定戦に進めばパリ行きの切符を手にできる。現地時間同日午前に行われた予選ではベドリック・レオナルド(インドネシア)とアレクサンドラ・ミロスラフ(ポーランド)の男女世界記録保持者がともに1位通過を果たし、日本勢も安川潤が男子8位で上位16人による決勝トーナメントへと駒を進めた。

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1回戦を登る安川

 男女が並行して行われた決勝トーナメントでは、五輪へのプレッシャーからか多くの選手がミスを犯し、まさかの展開が相次いだ。女子は1回戦で世界ランク1位のナタリア・カルッカ(ポーランド)がスタート直後に足を滑らせ、男子も同1位のレオナルドが終盤でミスを犯し敗退した。日本の安川は東京五輪に出場したリシャト・ハイブリン(カザフスタン)との対戦に笑顔を見せて臨んだが、動きにズレが生じたか途中のホールドを取り切れずに落下してしまった。準々決勝は女子8人のうちポーランド勢が3人、インドネシア勢が2人を占め、4レース中2レースで行われたその2カ国同士の対決は1勝1敗に。男子は8人中、中国勢が3人、インドネシア勢が2人とやはり強豪国が多数を占め、2レースで同国勢のつぶし合いとなった。

男女ベスト4

 ベスト4が出揃い、ここで勝利すれば五輪内定が決まる準決勝。女子第1レースは東京五輪4位で圧倒的な勝率を誇るミロスラフが出だしのトモアスキップの際にスリップし敗北。プレッシャーに押しつぶされたのか、らしくないミスで顔を覆ってしまう。一方、一番乗りで五輪に内定したハントも手で顔を抑えたがこちらは喜びの感情となった。第2レースは再びポーランド勢とインドネシア勢が相対し、リードしていたアレクサンドラ・カルッカ(ポーランド)が後半のミスでデウィに逆転を許した。デウィは静かに喜びを表現した。

今大会での五輪内定はならず。ミロスラフは顔を覆った

涙するハント

デウィも五輪出場枠に入った

 男子の準決勝第1レースは自己ベスト5秒05同士となる対決を5秒02の自己新で制したロンが五輪内定。ガッツポーズを連発した。続くムリョーノとズルロニのレースはムリョーノに細かいミスが続き、5秒13でズルロニが勝利。ズルロニはしばらく信じられないといった様子だった。

五輪行きのかかる一戦を制したロン(右)

レース直後のズルロニ

 ビッグファイナルではデウィがハントに勝利。昨年から本格的にシニアの国際大会に出場し始めた22歳が初の世界選手権優勝を遂げた。男子はズルロニが優勝し、W杯で1度も表彰台経験のない世界ランク16位の21歳が頂点に立った。ズルロニは1回戦でゴールタッチを1度ミスするも相手が直前に失速していたことで勝ち上がり、準々決勝ではヨーロッパ新記録の5秒02をマーク。最終レースはロンのフライングにより戦わずして勝つという強運と実力の両方を発揮して世界王者に輝いた。

女子表彰台=(左から)ミロスラフ、デウィ、ハント

男子表彰台=(左から)ロン、ズルロニ、ムリョーノ

<決勝リザルト>

[女子]
1位:デサク・マデ・リタ・クスマ・デウィ(INA)/6秒49
2位:エマ・ハント(USA)/6秒67
3位:アレクサンドラ・ミロスラフ(POL)/6秒55
4位:アレクサンドラ・カルッカ(POL)/8秒07

[男子]
1位:マッテオ・ズルロニ(ITA)/5秒56
2位:ロン・ジンバオ(CHN)/FALSE START
3位:ラーマッド・アディ・ムリョーノ(INA)/5秒05
4位:リシャト・ハイブリン(KAZ)/7秒34
――――――
12位:安川潤(JPN)/FALL

※左から順位、氏名、所属国、記録
※記録は、1・2位はビッグファイナル(優勝決定戦)、3・4位はスモールファイナル(3位決定戦)でのタイム

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CREDITS

編集部 / 写真 © Lena Drapella/IFSC

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