(左から)2位のメジディ・シャールック、優勝のミカエル・マウェム、3位のイ・ドヒョン

33歳マウェムが初優勝 安楽4位、藤井6位で日本男子5連覇ならず【クライミング世界選手権2023】

 スイス・ベルンで開催中のIFSCクライミング世界選手権は4日(日本時間5日)、ボルダーの男子決勝を行い、33歳のミカエル・マウェム(フランス)が初優勝を飾った。日本勢は安楽宙斗が4位、藤井快が6位でメダルには届かなかった。

会場となったポストファイナンス・アリーナ(写真:© Jan Virt/IFSC)

 決勝には1日の予選、4日の準決勝でいずれも首位通過した安楽を筆頭に、マウェム、藤井、メジディ・シャールック(フランス)、イ・ドヒョン(韓国)、ニコライ・ウズニック(オーストリア)の6人が進出。W杯1年目でボルダー年間王者に輝いた16歳の安楽は予選から全課題を完登し初めての世界選手権で決勝の舞台へ。前回大会王者の藤井は今年のW杯で不本意な成績に終わり、またパリ五輪の出場権がかかる今大会でその対象とはならなかった中で見事決勝に勝ち上がった。シャールックとイは今シーズンのW杯シリーズ各大会で優勝するなど世界ランキング上位の選手で、ハイレベルな戦いが予想された。

 第1課題はキャンパシングでゾーンに進み、右手でマントルを返してゴール取りする内容。1番手のウズニックは1、2トライ目ともにゴール取りを失敗。イは3トライ目に登り切りこのラウンドの初完登をマークした。シャールックは前の2人とは異なり飛びつかないアプローチで両手をトップホールドに持っていった。

イが決勝最初の完登を決める

 藤井は再び完登に迫った2トライ目でムーブに迷い消耗したのか続くトライでゾーン前に力尽きてしまう。マウェムは高速でフラッシュ。安楽はシャールックと同じく反動をつけずにトップホールドを保持し、涼しい表情で一撃した。

第1課題を登る安楽

 4人が完登した後の第2課題は繊細な動きが求められるテクニカル系。頭上のスローパーを処理してから不安定な足場の中をトラバースしていくのだが、慎重を要するため1トライにかける時間が長い課題となった。

写真:© Jan Virt/IFSC

 ウズニックがバランス取りに苦慮してゾーン獲得にとどまった直後、2番手のイは2トライ目、トラバースした先にある極薄ホールドの保持に成功。左手でしっかりトップホールドをとらえてから右手を添える形で完登を果たした。シャールック、藤井は何度も足を滑らせてしまいゾーン止まりとなったが、マウェムは極薄ホールドを持つ右手を離してトップホールドに素早く移し、イとは違い左手を添える格好で攻略した。安楽も見事な足さばきを見せて2アテンプトで登り切った。2課題を終え、イ、マウェム、安楽の3人が連続完登。アテンプト数の少ない安楽が首位で折り返した。

安楽が連続完登で首位をキープした

 第3課題は素早いステップを踏むコーディネーションムーブを経てプッシュして上がっていくパートが完登の肝となり、今年のW杯八王子大会の男子決勝最終課題のように観客側を向いた状態でプッシュできるかどうかが課題攻略の鍵となった。

第3課題(写真:© Jan Virt/IFSC)

 ウズニックはゾーンなし。イもプッシュし切れない状況が続いたが最終トライで何とか上昇してゾーンを手にした。シャールックは何度か試技を重ねて最適な動きを模索しながらコーディネーションを決めると、そのままノーミスで完登。2つ目の完登に感情を爆発させた。

喜ぶシャールック(写真:© Jan Virt/IFSC)

 藤井は壁に正対してプッシュする試みを続けて攻略ならず。マウェムは力強いムーブで難関を越え、壁に背を向けたまま右手に続き左人差し指をそっとトップホールドに置く形で完登が認められた。ライバルたちに続きたい安楽だったが、コーディネーションムーブがなかなか決まらない。1度は決まったものの反転せずにプッシュしてしまい失敗。痛いゾーンなしに終わり、連続完登もここで止まった。2完登2ゾーンの安楽は4位へと順位を落とし、3完登3ゾーンのマウェムが1位に浮上した。

第3課題を完登し、首位に浮上したマウェム

 第4課題は珍しいスケルトンのホールドがキャンパシングのセクションで使われた。先頭のウズニックが2トライ目にテンポよく同パートのムーブをつなげていき、悠々と完登したことで最終課題はやさしめの難易度設定かと思われた。しかし、その後はフリクションの少ないツルツルしたスケルトンが選手たちを苦しめる。

第4課題に挑むウズニック。このあと決勝の初完登をマークした

 イは何もさせてもらえず、シャールックは完登ムーブで失敗。藤井もノーゾーンに終わった。ここでゾーンを取りさえすれば優勝が決まるマウェムも3手連続で繰り出すキャンパシングのムーブが決まらない。だが4トライ目でついにゾーン到達。完登は逃したが落下後に雄たけびを上げ、会場もライトを点滅させて世界王者誕生の瞬間を演出した。最後のトライは失敗したものの、会場は大きな拍手を送りベテランの初優勝を称えた。安楽は完登すれば銀メダルのチャンスだったが、攻略は容易ではなかった。

優勝を決め、雄たけびを上げるマウェム

 この結果、3完登4ゾーンのマウェムが1位、2完登4ゾーンのシャールックが2位でフランス勢が上位を独占し、3位には2完登3ゾーンのイが入った。マウェムはW杯の優勝経験がない中で世界王者に輝き、他2人も世界選手権で初の表彰台となった。後半の2課題で失速してしまった安楽は2完登2ゾーンで4位、最終課題でただ一人完登したウズニックは1完登3ゾーンで5位、2ゾーンの藤井は6位で終えた。日本男子は4大会連続でこの種目の金メダルを獲得してきたが、5連覇とはならなかった。

世界選手権決勝の舞台に戻ってきた藤井は6位でフィニッシュ

3人はいずれも世界選手権初の表彰台となった

 今大会ではボルダーとリードの各単種目に出場した選手の中で上位20人が大会日程後半のボルダー&リード種目に進出し、決勝で3位以内かつ1つの国の中で2位以内となればパリ五輪の出場権を手にできる。表彰台こそ逃した安楽だが、ボルダーで世界4位に入ったこと、パリ五輪出場権獲得に向けて好位置につけたことはポジティブにもとらえられる。まずは6日、予選を首位通過したリード種目の準決勝に臨む。

<決勝リザルト>

1位:ミカエル・マウェム(FRA)/3t4z 8 12
2位:メジディ・シャールック(FRA)/2t4z 5 10
3位:イ・ドヒョン(KOR)/2t3z 5 15
4位:安楽 宙斗(JPN)/2t2z 3 3
5位:ニコライ・ウズニック(AUT)/1t3z 2 5
6位:藤井 快(JPN)/0t2z 0 3

※左から順位、氏名、所属国、成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

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CREDITS

編集部 / 写真 © Lena Drapella/IFSC

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