(左から)2位のガンブレット、優勝の森、3位のソ

森秋彩が快挙! 日本人初のリード優勝遂げる【クライミング世界選手権2023】

 スイス・ベルンで開催中のIFSCクライミング世界選手権は6日(日本時間7日)、ポストファイナンス・アリーナでリード女子決勝を行い、森秋彩が完登で優勝を果たした。リードの優勝は男女を問わず日本人初、世界選手権の優勝は日本女子初の快挙となった。

 予選をグループ首位で通過していた森は、この日の午前(現地時間)から行われた準決勝でも1位に立ち、日本人最年少の15歳でメダル(3位)を獲得した2019年大会以来2度目の決勝に駒を進めた。決勝には準決勝上位順にヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)、ブルック・ラバトゥ(米国)、ラウラ・ロゴラ(イタリア)、モーリー・トンプソン・スミス(英国)、ジェシカ・ピルツ(オーストリア)、ソ・チェヒョン(韓国)、ミア・クランプル(スロベニア)、野中生萌が進出。森、ガンブレット、ラバトゥはボルダーに続く決勝。得意とするボルダーで予選落ちを喫した野中はリードで挽回しこの種目では自身初の世界選手権ファイナリストとなった。

左が女子決勝ルート(写真:© Jan Virt/IFSC)

 準決勝で8位に2人が並んだため9人で行われた女子決勝は、準決勝に続き50手を超えるロングルートとなり、大きくせり出したハリボテの処理など下部から体力を消耗させる内容となった。先頭の野中はランジを成功させて中盤に突入。しかしブルークロス付近でスリップしてしまい、余力を残した状態で落下してしまった。順調に進んでいた中でのミスに本人も首を振った。

リードで初の世界選手権決勝を戦った野中は8位でフィニッシュ(写真:© Jan Virt/IFSC)

暫定首位に立ったソ。銅メダルを獲得した(写真:© Jan Virt/IFSC)

 2番手のクランプルは野中の高度32から10手伸ばしたところでフィニッシュ。さらに4番手のソが最終面に入り47+まで最高到達点を更新した。その後はソが首位をキープ。7番手のラバトゥも中盤を抜けてペースを上げていくも39+に終わった。全体的に時間を要する選手が多く、8番手のガンブレットも序盤でムーブに迷いが見られたが、ギアを上げて40手目を超えていく。肘が上がりながらも足はホールドに残して粘り、ついにトップホールドへと到達。残り3秒で最後の支点にロープをかけ完登した。

終盤を登るガンブレット(写真:© Jan Virt/IFSC)

完登し歓喜の表情を見せる(写真:© Jan Virt/IFSC)

 優勝のために残された道は完登しかなくなった最終9番手の森は、時間配分を考慮してか序盤からハイテンポで上昇。長いレストを挟むことなく、ガンブレットよりも速いペースでトップホールドに迫っていく。最終盤となっても足をうまく使いながら着実に進み、飛びついた先の最後のホールドを離すことなく残り約30秒で見事に完登。準決勝でガンブレットより上位だった森がカウントバックで優勝を決めた。

完登を目指しハイペースで進む森(写真:© Jan Virt/IFSC)

完登後、観客は総立ちで新女王を称えた(写真:© Jan Virt/IFSC)

 最後までレストらしいレストをせずノンストップで猛進した新女王は手を振って大歓声に応え、照れ笑いしながらファイナリストたちとハグを交わした。これまでリードの最高順位は平山ユージの2位、女子の最高順位は野口啓代、野中生萌のボルダー2位で、世界選手権における日本人のリード種目優勝は史上初、日本女子の優勝は種目を問わず初めての快挙となった。稀代の女王・ガンブレットを破った森がクライミング史にその名を刻んだ。

写真:© Jan Virt/IFSC

<決勝リザルト>

1位:森 秋彩(JPN)/TOP
2位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/TOP
3位:ソ・チェヒョン(KOR)/47+
4位:ミア・クランプル(SLO)/42
5位:ブルック・ラバトゥ(USA)/39+
6位:ジェシカ・ピルツ(AUT)/39
7位:ラウラ・ロゴラ(ITA)/36+
8位:野中 生萌(JPN)/32
9位:モーリー・トンプソン・スミス(GBR)/26+

※左から順位、氏名、所属国、成績(高度)
※同高度の場合は前ラウンド順位の高い選手が上位

大会スケジュールや出場日本人選手はこちらから

CREDITS

編集部 / 写真 © Lena Drapella/IFSC

back to top