(左から)2位の緒方良行、優勝の楢崎智亜、3位のメジディ・シャールック

楢崎、緒方がワンツーフィニッシュ! 最終課題で大逆転【ボルダリングW杯2022第1戦 マイリンゲン大会】

 クライミングW杯2022のボルダリング第1戦男子決勝が10日、スイス・マイリンゲンで行われ、最終課題の逆転で楢崎智亜がW杯通算5度目の優勝。緒方良行も2位となり、日本勢が今季開幕戦でワンツーフィニッシュを果たした。

 8日の予選に9人が出場した日本勢は楢崎、緒方がグループBの上位となるなど順調な滑り出しで、6人が全体上位20人による準決勝に駒を進めた。10日の準決勝では昨季世界選手権王者の藤井快、楢崎が全課題を完登して1、2位。緒方も5位で決勝に進出し、この3人が表彰台を独占した昨年のインスブルック大会の再現が期待された。

 決勝では20代の日本勢3人と、メジディ・シャールック(フランス)、コリン・ダフィー(米国)、ポール・ジョンフ(フランス)の10代3人が顔を合わせた。ダフィーとジョンフは比較的リードで高順位を獲得してきた選手で、ボルダリングではW杯初の決勝進出となった。第1課題はダフィー以外の5人が完登を記録。スタート後のダブルダイノからコーディネーションに繋げ、しっかりポジションを決めてからゴール取りするこの課題を緒方、楢崎が一撃。幸先の良いスタートを切る。

第1課題を一撃した楢崎。首位で第2課題に進んだ

 マイリンゲン大会で恒例となったクラックが設けられた第2課題では、ホールドによって作られた割れ目を目掛けてスタートを切るもジョンフ、緒方ともに失敗。3番手のダフィーがクラックの一部を左手で、右にあるボリュームを右手で持ち、ジャミングを回避する形で初のゾーンを獲得すると、4番手のシャールックが同様のムーブで完登。続く楢崎、藤井も途中から同ムーブに切り替えるが楢崎はゴール取りに失敗、藤井は時間が足らずにシャールックの単独完登を許した。

第2課題を唯一完登し、首位に浮上したシャールック。パリ五輪出場を期待されるフランスの17歳が優勝争いを混沌とさせる

クラックが設けられた第2課題を登る藤井。完登はならなかった

 第3課題は安定したポジションが取れず、スタートでアテンプトを重ねてしまう難関。緒方、楢崎は攻略の糸口さえ掴めず、その一方でジョンフが12アテンプト、ダフィーが19アテンプトと粘りのクライミングで完登を記録する。第3課題終了時点でシャールック、ジョンフが2完登2ゾーンで1、2位、この課題終盤でゾーンに達した藤井が1完登2ゾーンで3位となり、アテンプト数の関係から楢崎は5位、緒方は6位と下位に沈んだ。それでも全員に優勝の可能性が残り、最終課題を迎えた。

 最終第4課題は大振りのスイングで勢いを付け、両手を目一杯伸ばしてランジする豪快な課題。先頭のジョンフが失敗し、優勝の目が残った緒方はヒールフックしながらスイングすることで難所を突破。さらにキャンパシングからのゴール取りも一発で仕留め、ジョンフ、この後に競技するシャールックと同じ2完登で並び、完登に要したアテンプト数の差で一気に首位に浮上した。

最終課題のスタートでヒールフックを駆使する緒方。この後完登して首位に浮上するが、さらなるドラマが待っていた

 その後、完登すれば1位となる場面でダフィーがTOPホールドに左手をかけるも滑り落ち、登り切れば優勝のシャールックも同じムーブを失敗。手に汗握る展開で5番手の楢崎に競技順が回る。3トライ以内の完登で緒方を上回り首位に立つことができる楢崎は、自身の代名詞であるダイナミックなムーブを繰り出して1トライ目から完登目前に迫ると、時間を置いて挑んだ2トライ目に最終ムーブを修正して完登。左足を先に送ることで体勢を安定させた。

 楢崎が首位に立ち、2位には緒方。最終競技者の藤井が完登すれば日本勢の表彰台独占となるも、スイングからの一手を最後まで止め切れず。藤井は悔しさでマットを叩きつけた。この結果、最終課題を完登した楢崎、緒方が見事な逆転によるワンツーフィニッシュ。3位にはシャールックが入り、藤井は6位。日本男子は開幕戦から3人が決勝に進むなど、今シーズンも例年通りの活躍を予感させた。次回ボルダリング第2戦は5月6日から8日にかけて韓国・ソウルで行われる。

<決勝リザルト>

1位:楢崎 智亜(JPN)/2t3z 3 6
2位:緒方 良行(JPN)/2t3z 5 19
3位:メジディ・シャールック(FRA)/2t3z 7 9
4位:ポール・ジョンフ(FRA)/2t3z 15 18
5位:コリン・ダフィー(USA)/1t4z 19 27
6位:藤井 快(JPN)/1t3z 4 27
――――――
7位:井上 祐二(JPN)※準決勝進出
9位:土肥 圭太(JPN)※準決勝進出
14位:高田 知尭(JPN)※準決勝進出
23位:山口 賢人(JPN)
27位:吉田 智音(JPN)
31位:川又 玲瑛(JPN)

※左から順位、氏名、所属国、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

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編集部 / 写真 © Jan Virt/IFSC

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