(左から)2位のナタリア・グロスマン、優勝のヤンヤ・ガンブレット、3位のアンドレア・キューミン

ガンブレットが女子開幕戦を制する 圧巻の全ラウンド全完登【ボルダリングW杯2022第1戦 マイリンゲン大会】

 2022年のクライミングW杯開幕戦となるボルダリング第1戦スイス・マイリンゲン大会、女子決勝が現地時間9日(日本時間10日)に行われ、東京五輪金メダリストのヤンヤ・ガンブレットが決勝唯一の全課題完登で優勝。予選、準決勝も全課題を完登する圧巻のパフォーマンスで頂点に立った。

 8日の予選では2014年のW杯初出場以降、毎大会予選を突破していた野中生萌が27位に終わり、準決勝に進めない初の事態に。日本勢7人のうち予選通過を果たしたのは伊藤ふたばのみで、伊藤は9日の準決勝も決勝進出ライン上の6位に入りファイナル行きを決めた。

決勝課題を登る伊藤。5位で初戦を終えた

 準決勝上位6人による決勝で一番手を務めた伊藤は、スタティック系の第1課題でゴール取りのジャンプを試みるも届かず。世界ランク1位で準決勝2位通過だったナタリア・グロスマン(米国)でさえ攻略できなかったこの課題を、同1位通過のガンブレットは2トライ目に完登。他選手に比べてより高い場所に右足を置いたことでジャンプすることなくTOPホールドを手中に収めた。1トライ目は不正スタートでやり直しとされていたため、実質一撃だった。

 第2課題ではスタート後のランジに伊藤が苦戦。ゾーン獲得もならず2位から後退してしまう。負荷の強まるゴール下で落下する選手が続出する中、5番手のグロスマンが6トライ目に登り切って初完登。最終6番手のガンブレットは悠々と一撃してみせた。

 ここまで完登ゼロの伊藤は第3課題で好機到来。緩傾斜から強傾斜に切り替わるこの課題で足の踏み場に苦戦するも4トライ目にゾーンを獲得し、4分間の制限時間が迫る中、急ピッチでムーブを繋げてゴール取りに成功する。しかし、最後のホールドを両手で保持した直前にタイムリミットを迎えていたとのジャッジが下され、悔しさの残るトライとなった。その後は4選手が1トライ目に完登。ガンブレットも例に漏れず、ゾーン取り時に一瞬右手が離れるもすぐさま右膝を使って体を固定する離れ業を見せるなどして連続フラッシュとした。

ガンブレットは第1課題のスタートでミスを犯さなければ全完一撃での優勝がほぼ確実だっただろう

昨季年間女王のグロスマンは3完登で2位。3位以下は1完登以下にとどまったことで、ガンブレットとの“2強状態”が鮮明となる大会だった

 コーディネーション、保持力、パワーなど様々な要素が問われる最終第4課題では4人がゾーンなしに終わった後、グロスマン、ガンブレットともに一撃する異次元の登り。これで唯一の全完登に到達したガンブレットが開幕戦を勝利で飾り、集まった大観衆から祝福の歓声を受けた。2位は3完登のグロスマンで、3位には地元スイスのアンドレア・キューミンが入り自身初のW杯表彰台に上がった。伊藤は5位で初戦を終えた。

 なお、ガンブレットは優勝後のインタビューで、昨夏の東京五輪での心身の疲労から休息を必要としており、今シーズンのW杯はボルダリングにはこれ以上参戦せずリードに注力していくことを明かし、「パリ五輪出場に向けて調整していきたい」と次なる目標への想いも話している。

<決勝リザルト>

1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/4t4z 5 5
2位:ナタリア・グロスマン(USA)/3t4z 8 16
3位:アンドレア・キューミン(SUI)/1t2z 1 3
4位:オリアーヌ・ベルトン(FRA)/1t2z 1 5
5位:伊藤ふたば(JPN)/0t2z 0 8
6位:スターシャ・ゲヨ(SRB)/0t1z 0 3
――――――
25位:倉 菜々子(JPN)
27位:野中 生萌(JPN)
27位:小池 はな(JPN)
29位:青柳 未愛(JPN)
33位:菊地 咲希(JPN)
49位:松藤 藍夢(JPN)

※左から順位、氏名、所属国、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

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編集部 / 写真 © Jan Virt/IFSC

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