野口啓代の競技人生に幕。「最後まであきらめずに登れたので、良かった」【東京五輪 女子決勝】

 6日に行われた東京五輪のスポーツクライミング女子複合決勝(青海アーバンスポーツパーク=東京都江東区)は、ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が金、野中生萌が銀、野口啓代が銅メダルに輝き、新競技で日本勢2人が表彰台に上がった。

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 競技生活最後の大会であるオリンピックでメダル獲得を果たした野口は、競技後のインタビューで今の心境を問われ、「あまりうまくいかなかったとは思うんですけど、でも最後まであきらめずに登れたので、良かったと思います」と、涙を目に浮かべながら答えた。

 苦手の第1種目スピードは初戦に勝利。いいスタートを切った。しかしボルダリングは難易度の高い課題に苦しんでゼロ完登。最後のリードで力を振り絞った。「スピードは順位的にはうまくいったと思うんですけど、一番得意なボルダリングで一本も登れずに心が折れそうだったんですが、最後のリード、本当に私の最後のクライミングなので、思い切り、一手でも多く登りたいなと思って登れたのがすごい良かったと思います。疲れていて、限界だったんですけど、気持ちでプッシュできたんじゃないかなと思いました」。

 「このオリンピックでどうしてもメダルが取りたいなという気持ちでずっと頑張ってきて、金メダルには届かなかったんですが、すごい良かったと思っています。もっともっと登りたかったし、もっともっといいクライミングをお見せしたかったんですけど、今はそれ以上に嬉しい気持ちのほうが大きいです」と、無念さものぞかせながら、それでも嬉しさが勝っているとした。

 日本のボルダリング女子は長らく野口の一強時代が続いていたが、2016年にW杯初優勝を成し遂げた野中が台頭。18年には年間優勝を2人で激しく争うなど、肩を並べるまでになった。常に切磋琢磨してきた野中との表彰台は、クライミングの神様からの贈り物だったのかもしれない。

 「生萌とは長くずっと一緒に頑張ってきて、オリンピックでも一緒にメダルを取りたいなと思っていました。本当は2人で金、銀が良かったんですけど、でも一緒に表彰台に乗れて、すごい嬉しいです」

 最後に五輪でのメダルという功績を残し、偉大なクライマーが競技の舞台から退く。今後はクライミングの普及にかかわる活動をしていく意向だという。もちろん岩場を登る機会もあるだろう。長らく日本のクライミング界を牽引し、多くの感動や勇気を与えてきた彼女の、“第2のクライミング人生”も見届けたい。

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編集部 / 写真 ロイター/アフロ

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