(左から)本間、安楽、吉田が表彰台に立ち、日本男子が表彰台を独占。安楽は日本人初のW杯2種目優勝を果たした

安楽宙斗が日本人初のW杯2種目制覇! 日本男子が決勝8人中7人を占めて表彰台も独占【リードW杯2023 第4戦ブリアンソン大会】

 クライミングW杯リード第4戦決勝がフランス・ブリアンソンで15日(日本時間16日)に行われ、ファイナリストの8人中7人を日本勢が占めた男子は1位に安楽宙斗、2位に本間大晴、3位に吉田智音が入り、日本人が表彰台を独占した。リード初優勝を遂げた安楽は日本人初のW杯2種目制覇という快挙を達成した。

 今大会は8月1日に開幕する世界選手権(スイス・ベルン)前最後のW杯として開催された。前回シャモニー大会に続き、パリ五輪出場権のかかる世界選手権に向けた調整のためか多くの有力選手が欠場。今シーズンのボルダー全6戦とリード第3戦までで表彰台に上がった男女30人中24人が出場を見送った。そんな中で出場した日本勢はしっかりと上位に進出する。特に男子の勢いは凄まじく、14日の予選では6人が上位を独占、同日(日本時間15日)の準決勝でも7人が決勝進出条件の8位以内に入った。女子も久米乃ノ華が準決勝2位、谷井菜月が同3位で決勝に進んだ。

決勝に集まった大観衆

 先に行われた男子決勝のファイナリストには準決勝上位から順に安楽、樋口純裕、ハネス・プーマン(スウェーデン)、本間、上村悠樹、吉田、小俣史温、緒方良行が名を連ねた。プーマンも昨年のコンバインドジャパンカップに出場するなど日本と縁のある選手で、国内大会さながらの様相となった。

男子ファイナリストたち

 先頭で登る緒方は前半からテンポよく高度を上げていき、一番手ながら終盤の49手目まで達する好成績を収める。続く小俣が44+に終わると、3番手の吉田は高度49にプラスが付いて暫定首位に浮上した。初の決勝に進出した上村は37+でフォール。5番手の本間は吉田と同じく高度49から逆手で取りにいった一手をつかめなかったが、準決勝で上位だった本間が吉田を抜いて1位に立った。

決勝ルートを登る吉田。8度目のW杯決勝で初の表彰台に立った

本間は2位でフィニッシュ。3月に負った左足首の靭帯断裂から懸命なリハビリを経て表彰台にカムバックした

 その後、プーマンは39、樋口は40+にとどまり、最終競技者の安楽に出番が回る。予選、準決勝とここまで全課題を完登していた16歳は軽やかに上昇。序盤のランジも難なくこなす。30手目に達しておよそ30秒間のレストを取り入れると、残り3分を切って再び動き出す。声援が次第に大きくなっていく中、吉田、本間が力尽きたポイントを巧みな重心移動で突破。さらにムーブをつなぎ、最後はリズムよくダブルダイノを決めて決勝唯一の完登を果たした。余力を残した様子の安楽は、大観衆からの祝福の拍手に笑顔で応えた。

そつなくムーブをこなしていく安楽

予選からの全課題完登でリードW杯初優勝を決めた

 リード第1戦から4戦続けて決勝を戦った安楽はこれがリードW杯初優勝。先月のボルダー最終第6戦でも優勝しており、IFSC(国際スポーツクライミング連盟)によれば日本人選手でW杯2種目を制したのは史上初。今年W杯デビューながらボルダーで年間優勝、そしてリードでも年間ランキング首位に浮上した16歳が、最高の形で来月の世界選手権に臨む。2位の本間は3月に負った左足首の靭帯断裂というケガを乗り越えての表彰台、3位の吉田はW杯8度目の決勝で初のメダル獲得となった。リードW杯での日本男子による表彰台独占は4年ぶり2度目で、奇しくも同じブリアンソン大会以来となった。

祝福を受ける安楽。平山ユージ、安間佐千、野口啓代らレジェンドや楢崎智亜らも果たしていない2種目優勝を達成した

 一方の女子決勝は、3番手で登ったヴィータ・ルーカン(スロベニア)が初優勝を飾った。前の2人が落下した距離感の遠い34~35手を攻略すると終盤は粘りを見せて高度46まで記録を伸ばし、最後まで首位の座を守った。日本女子最高は4位の久米。レスト後の一手に時間を要してしまったことが影響したか2大会連続の表彰台に数手届かなかった。序盤のランジで失敗してしまった谷井は8位だった。

日本女子最高4位の久米

女子表彰台=(左から)エリスカ・アダモフスカ、ヴィータ・ルーカン、マノン・イリ

<決勝リザルト>

[男子]
1位:安楽 宙斗(JPN)/TOP
2位:本間 大晴(JPN)/49+
3位:吉田 智音(JPN)/49+
4位:緒方 良行(JPN)/49
5位:小俣 史温(JPN)/44+
6位:樋口 純裕(JPN)/40+
7位:ハネス・プーマン(SWE)/39
8位:上村 悠樹(JPN)/37+
―――――
11位:鈴木 音生(JPN)※準決勝進出
12位:百合草 碧皇(JPN)※準決勝進出

[女子]
1位:ヴィータ・ルーカン(SLO)/46
2位:エリスカ・アダモフスカ(CZE)/44+
3位:マノン・イリ(FRA)/44+
4位:久米 乃ノ華/43+
5位:モーリー・トンプソン・スミス(GBR)/35
6位:カミール・プージェ(FRA)/34+
7位:マルティナ・デメル(GER)/34+
8位:谷井 菜月/12+
―――――
17位:平野 夏海(JPN)※準決勝進出
19位:中川 瑠(JPN)※準決勝進出
25位:小池 はな(JPN)※準決勝進出
33位:柿崎 未羽(JPN)
43位:大田 理裟(JPN)

※左から順位、氏名、所属国、決勝成績(高度)
※同高度の場合は前ラウンド順位の高い選手が上位

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編集部 / 写真 © Jan Virt / IFSC

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