シャールック「チャンスをものにできた」【ボルダーW杯2023 第1戦八王子大会】男子決勝後の選手コメント

 東京都のエスフォルタアリーナ八王子で23日に行われたクライミングW杯ボルダー第1戦の男子決勝は、優勝した18歳のメジディ・シャールック(フランス)を頂点に18歳のハネス・ハン・デュイセン(ベルギー)、19歳のポール・ジョンフ(フランス)と10代3人が表彰台に上がった。日本勢は30歳の藤井快が4位、16歳でW杯初出場の安楽宙斗が5位とベテラン、若手が上位入賞を果たした。以下、表彰台に上がった選手と日本勢による主な一問一答。

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メジディ・シャールック(優勝/フランス)

――優勝した今の気持ちは?
「昨年のW杯でも1位を獲得していたけど、2回目の優勝は大きな目標だったし、もう一度優勝したい気持ちも強かった。勝ち続けるの本当に大変なことだと思うので、2回目の優勝はとてもうれしい。今大会を通していい登りができたと思う」

――決勝で一番印象的な課題は?
「自分しか完登できなかった第1課題。完登した時はものすごくうれしい瞬間だった」

――大会全体を振り返ると?
「予選は調子がよくて、自信を持って課題に挑戦できた。3課題目まではフラッシュだったけど4課題目はゾーンすら獲得できず、準決勝に進めないかもと思ったので無事に通過できてよかった。準決勝は最終課題で完登できたことで決勝に進出できた。チャンスをものにできた」

――今シーズンの目標は?
「(パリ五輪出場権の懸かる)世界選手権が今シーズン最大の目標であることは間違いない。世界選手権に向けてベストを尽くしていくつもり」

――日本の観客や日本で過ごした時間はどうだった?
「日本滞在はとてもよく、食事も好きだし、天気も思っていたより暑くなくて快適だった。会場の雰囲気もよく、多くの観客の前で登ることが好きなのでよかった。でも、日本の観客はヨーロッパの観客と違って叫び声が小さいと感じた(笑)」


ハネス・ハン・デュイセン(2位/ベルギー)

――2位となった今の気持ちは?
「W杯では予選落ちが続いて準決勝に進めていなかったので、2位はラッキーというか、本当に不思議な感じ。でもすごくうれしいことに変わりはない。準決勝進出、さらに決勝進出が決まった時は信じられないくらいだった。今シーズン初戦で表彰台に上がれたことも信じられない」

――去年の成績から飛躍を遂げた要因は?
「昨シーズンと比較して、壁の中でのポジショニングが一番変わったと思う。冬のトレーニングでかなり改善できた。シニア大会で結果を出すためには重要なポイントだと思っていた」

――世界ユース選手権での2連覇という実績もこの結果に繋がっている?
「確かにそう思う。1回目の優勝はボルダーで初めて結果を出して『成し遂げた』という感じで自信がつき、その後の大会でもいい成績を残せるようになった。そこからさらに優勝を重ねたことで自分自身をより信じられるようになり、トレーニングでも大会でもいい結果に結びついていった。世界ユース2度目の優勝は、自分が本当に強いクライマーであることを証明できたような気がする。そして今大会での表彰台。いい方向に進んでいると自信を持っている」

――決勝で一番印象的な課題は?
「2課題目のスラブ。唯一自分だけ完登できたこともある。1課題目でもう少しいいところまで登れていれば1課題目だったけど(笑)。(4課題目は)まったくダメだった。本当に何もわからなった。最後のトップホールドを掴めたら、だいぶかっこよかったと思うね」

――大会全体を振り返ると?
「準決勝に進みたいと思っていたので、予選では『本当に強いクライマーだ』と自分に言い聞かせ、自らプレッシャーをかけていた。準決勝はプレッシャーもなく、ただ身を任せようと思っていた。競技後にアイソレーションに戻ると、他のクライマーがいい登りをしているように感じて、自分は決勝に行けないんじゃないか?という考えが頭をよぎったけど、決勝進出が決まった時はホッとして、本当にうれしかった。決勝は準決勝以上にノープレッシャーで本当に楽しみたいと思っていた。笑顔で観客を盛り上げるために登ることができれば、と思っていたことがいい結果に結びついたと思う」

――今シーズンの目標は?
「ユースの世界選手権では確実に優勝して3連覇を狙い、ボルダーに加えてリードも勝てるようにしていきたい。シニアの世界選手権では準決勝に進出できれば。W杯でも準決勝、決勝に残り安定した結果を出せるようにしたい」

――日本の観客や日本で過ごした時間はどうだった?
「いい環境で過ごすことができた。時差ボケも直せたし、W杯に向けて過去最高の準備ができたと思う。食事も本当においしくて気に入っている。B-PUMP荻窪でのトレーニングもよかった。早く日本に来ていたから最初の内は僕たちだけだったけど、大会が近づくにつれて他国のチームも集まり一緒に登れてすごくいい雰囲気だった。(ベルギーのジムと比べると?)まったく異なるスタイルのジムだと思う。ダイナミックなムーブが多く、本当に難しい課題や面白い課題も多いPUMPのほうが好き。(ベルギーにも似たようなジムはある?)ジムは結構あるけど、ボルダーで本当にいいと言えるジムは2つくらい。PUMPと比べればまだよくなる部分はあるけど、今のトレーニングに関してはこの2つのジムで十分だと思っている」


ポール・ジョンフ(3位/フランス)

――初めて表彰台に上がった今の気持ちは?
「これまで挑んだ決勝ではすべて4位だったので、3位で表彰台はうれしい。トレーニングパートナーで友人のメジディと一緒に表彰台に上がれたことも本当にうれしい」

――決勝で一番印象的な課題は?
「1つ目の課題。メジディが完登していたのは知っていたし、ワクワクして挑み、惜しいところまで行けていたので、完登できてなくて残念だった。最後の4課題目は僕にとっては難し過ぎた。完登できれば盛り上がることは理解していたけど、やっぱり難し過ぎた」

――今シーズンの目標は?
「世界選手権で五輪出場権を獲得すること。自国で開催される五輪なので本当に楽しみ。トレーニングを積んで、もっと強いクライマーになりたい」

――日本の観客や日本で過ごした時間はどうだった?
「日本はいい国だと思っていたので、行きたい国の一つだった。食べ物はおいしくて、会場の雰囲気もよく、観客も本当にクールだった。歓声を上げてくれて『好きだなぁ』と思った」


藤井快(4位)

――決勝を終えた感想は?
「かなりハードなラウンドだった。またモダンなクライミングというか、昨今のトレンドを感じた大会でもあった。コーディネーションとプッシュとスラブ。やっぱりこの3要素がかなり大事になるのかな?と思わされるような大会だった。その3つすべてが苦手なので、少しずつ良くはなっているけど、これから今シーズンどう修正していくかという、全ラウンドを戦えたことがこの大会のよかったところというか、次のためになる大会だったなと思っている」

――家族が会場に駆けつけていたようだが、何か言葉は掛けられた?
「基本的には『楽しんできて』というところ。決勝の面子も若い選手が多かったので、『負けるな』とは言わないけど、『しっかり楽しんできて』と。プレッシャーとか、若い子の勢いとか、そういうのに気持ちで負けないでしっかり楽しめればいいんじゃない?という感じで言ってもらえた。実際に今大会は予選から決勝までを通して楽しかった。久しぶりにすごく楽しかった」

――最終課題では観客から手拍子もあった。課題に挑戦する時にはどんなことを考えていた?
「率直に言ってしまうと『これできるの?』と思っていた。盛り上げてもらって、絶対に登りたいと思いつつ、さてどうやろう?という感じで、ずっと頭にハテナが浮かんでいる感じだった。競技が終わって他の選手を見ていてもみんなそんな感じだったので、選手がセッターについていけなかったという、悔しいところ」

――最終課題の攻略法を他の選手と話した?
「185cmあればできるんじゃないかっていう話はしていた。おそらく設定としてはポールくんがやったみたいな感じで、プッシュに入ると思う。彼は身長が185cm以上あって、170cmとかの僕らはジャンプをしなきゃいけないシチュエーションだった。本当に遠くてかなりハードだねという話はしていた。あの課題は時間内で登るなら設定ムーブを無視できるくらいの身長があれば登れたのではないかなと。僕らは身長が低かったね、みたいな話をした」


安楽宙斗(5位)

――決勝を終えた感想は?
「とにかく今一番思っているのは、本当に楽しかったということ。この舞台に立てただけでも十分だけど、やっぱり表彰台でみんなの前に立って終わりたかったという悔いは残る」

――初めてのW杯だったが?
「初めてのW杯で正直ここまで来られたのは自分でも褒めていいかなと思う。いいスタートダッシュが切れた」

――第2課題は完登目前に迫るなど惜しかったがどうしたら完登できた?
「左足を上げてゴールホールドに飛び出すシーンは決勝の舞台ということもあって緊張していて、足を踏み込む前に手で取ろうとしてしまった。しっかり乗り込みつつホールドを狙う、という感じでやればいけたんじゃないかなと思う」

――(ホールド間の)距離感はどう感じた?
「圧倒的に遠かったけど、でも今年はこれからずっとW杯を戦っていくわけで、身長も急には伸びないと思う。他の選手は例えば3課題目で僕と違うムーブで攻略していたところもあった。そういう発想力で何とか遠い距離の課題も自分のものにしていきたい」

――準決勝の最終課題完登時にボルダーでは珍しくガッツポーズしていた。過去の大会でのうれしさと比べると?
「今まで最高だったんじゃないかなと。幸せだった」

――今日見えた自身の課題は?
「セッターの意図をくみ取るのが得意と言えば得意だが、それゆえに3課題目みたいにムーブにこだわってしまうところがある。それはオブザベーションの時にすごく実感して、藤井快さんとかはオブザベの時に自分では出てこないようなムーブが出てきていた」

――パリ五輪については?
「代表には選ばれたいけどまだまだ大会は続く。五輪に向けて練習するというよりは、1大会1大会、前の大会よりも強くなろうという気持ちで練習している」

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 窪田亮

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