スポーツクライミングの3種目

 スポーツクライミングとは人工のホールドを使った「ボルダリング」「リードクライミング」「スピードクライミング」の3種目を指しますが、これらの競技の概要をもう少し詳しく見てみましょう。また、東京オリンピックなどで採用される3種目を複合した「コンバインド」という採点方式も説明します。

【東京五輪】スポーツクライミングの競技ルールをわかりやすく解説!

登り切った回数を競う、ボルダリング

写真:牧野慎吾

 ボルダリングとはロープを付けない種類のフリークライミングで、スポーツクライミングの場合は高さ4~5m程度の壁において4~8手ほどのコース(課題と言います)を登ります。

 ボルダリングの成績は「いくつの課題を登ることができたか(最後まで登り切ることを「完登」と言います)」で決めますが、それでも決着がつかない時のために課題途中には「ゾーン」というホールドが設定されていて、その獲得数が次に重要になります。それでも同着の場合は、より少ないアテンプト(トライのことを指します)で多くのコースを登ることができた選手が上位になります。

 整理すると、「①完登数」「②ゾーン獲得数」「③完登に要した合計アテンプト数(少→多)」「④ゾーン獲得に要した合計アテンプト数(少→多)」の順番で順位を決定します。

 公式大会では予選、準決勝、決勝があり、予選では5本、準決勝と決勝では4本の課題が用意されます。競技時間は予選と準決勝は各課題5分間、決勝は4分間です。また他の選手の競技は見ることができません。

 予選と準決勝は「ベルトコンベア方式」と呼ばれ、選手は初見のコースに対して「5分間の競技」と「5分間の休憩」を交互に繰り返し、すべての競技を終えます。選手が次から次に登場するさまがベルトコンベアのように見えることから名前が付きました。決勝は「ワールドカップ決勝方式」と呼ばれ、すべての選手で各コース2分間の下見(「オブザベーション」と言います)を終えた後、1つのコースに対して全選手が競技を終えた時点で揃って次のコースに移ります。

登る高度を競う、リード


写真:編集部

 リードクライミングはクライマーが自身に繋がれたロープを支点にかけていくことで安全確保しながら登る種類のフリークライミングで、スポーツクライミングの場合は高さ12m以上の壁で、最大60手程度のコースを登ります。リードの成績は「どの高さまで登ることができたか(「高度」と言います)」で決まります。

 公式大会では予選、準決勝、決勝があり、予選では2本、準決勝と決勝では1本のコースに1回ずつのみトライでき、競技時間は6分間です。予選ではあらかじめ競技のデモンストレーションを見ることができますが、準決勝と決勝では進出選手全員でオブザベーションをし、他の選手の競技を見ることはできません。到達高度が同じだった場合は、前のラウンドでの上位選手が上の順位となる「カウントバック」が適用されます。それでも互角だった際は、表彰台にかかわる場合のみ、落下するまでの競技時間が短い選手が上位に、完登で並んだ時はより速く最終支点にロープをかけた選手が上位となります。

登る速さを競う、スピード


写真:森口鉄郎

 スピードクライミングはロープがあらかじめ終了点からかかっている状態で登りスピードを競うフリークライミングで、スポーツクライミングの場合は高さ15mの壁に設定されたコースを登ります。使用されるコースは世界統一で予め選手に知らされているため、事前に練習をすることができます。スピードの成績は「どれだけ速くゴールまで登ることができるか」で決まります。

スピードクライミングの世界記録と日本記録

 公式大会は予選と決勝トーナメントで行われ、予選では同一コースが設置された2つの壁でそれぞれ1トライの計2トライ、決勝トーナメントではどちらかの壁で競技をします。予選は2トライのうち速いほうのタイムが予選記録として採用され、上位16人が決勝トーナメントに進出します。決勝トーナメントは2人の選手が並んで競技していき、どちらかタイムの速い選手が勝ち上がっていきます。

総合力を競う、コンバインド

 東京オリンピックで採用される採点方式として、3種目を複合した結果で成績を決める「コンバインド(複合)」があります。ボルダリングの決勝課題数が異なるなど一部変更はありますが、上記3種目のルールを基に、スピード、ボルダリング、リードの順番で競技がなされ、それぞれの種目の順位を掛け算した数字の小ささで成績が決まります。足を引っ張るような苦手種目がなく、かつ高順位を獲得できる勝負種目があるような選手が優勝の可能性が高くなります。

 「ボルダリング」「リードクライミング」「スピードクライミング」、そして「コンバインド」と各種目の特徴やルールを知ったみなさんは、ぜひ大会を観戦してみてほしいですね。それぞれの魅力を味わい、自分に合った楽しみ方を見つけてもらえればと思います。

CREDITS

植田幹也

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