5・6年女子の上位3人と表彰式プレゼンターを務めた野口啓代氏

過去最多200人近くの小学生が腕を競う【Ground Art Wall presents 第5回ボルダリング小学生競技大会】

 小学3~6年生を対象とした「Ground Art Wall presents 第5回ボルダリング小学生競技大会」が10月29、30日、都立水元公園にある「葛飾区東金町運動場スポーツクライミングセンター」で行われた。

 過去の優勝者、メダル獲得者らがその後のユース日本代表に選出されるなど、キッズクライマーの登竜門として年々注目度が高まっている同大会。今回は表彰式のプレゼンターとして東京五輪女子銅メダリストの野口啓代氏が来場。例年ルートセッターを務めている伊東秀和氏、永田乃由季氏とともに場内MCも担当して大会を盛り上げた。

場内MCの(左から)永田乃由季氏、野口啓代氏、伊東秀和氏

 若年層における競技人口増加を受け、今年から3・4年のカテゴリーは男女別で開催。一部抽選を経て、3・4年女子は同男子を上回る49人が集まるなど、女子からの高い人気も感じさせる盛況ぶりで、出場選手は過去最多200人近くに達した。29日の予選はコンテスト方式で8課題が用意され、その上位6人が30日の決勝に進んだ。

決勝の様子

 3・4年女子決勝は予選1位の海野奈花(なな)、同4位の長島永和(はるか)が第3課題まで一撃を続けたが、序盤からキャンパシングする高強度の最終課題に全員が苦戦。最終的にはこの課題のゾーンを海野より少ないトライ数で捉えた長島が頂点に立ち、「昨年は決勝に残れずとても悔しかったので、優勝できてよかった」とリベンジを果たした。なお、3年生で臨んだのは男女を通じて橋本暖(ひなた)ただ一人で、2完登で4位と上級生に劣らぬ腕前を披露した。

3・4年女子で優勝した長島永和

 3・4年男子決勝はピンチ系や強傾斜壁の課題が並び、ほとんどが2アテンプト以内に完登する一進一退の展開となるも、ダブルダイノから両手を開いて止めにいく最終課題で完登数が減少。だが原天馬が迫力あるデッドポイントを連発してトップホールドを掴み切ると、最後に登る田中陽(はる)はスイスイと上昇し1アテンプト少なく完登。「体力やトライ数を制限することを意識して練習してきた」と話した4年生が初出場初優勝に輝いた。

3・4年男子で優勝した田中陽

 
 野口氏が「身体のサイズが小さいだけで、テクニックや時間の使い方、修正力はシニアの選手と変わらないと感じた」と振り返ったように、ここまでハイレベルな競技が続き、それは5・6年でも同様だった。同女子決勝は「得意のパワームーブが多かった」と話した中村まりんが強傾斜の第3課題を唯一完登。前回の男女混合を制し唯一5年生としてファイナリストに名を連ねた玉城陽南美(ひなみ)らを抑え、全完登で戴冠した。

5・6年女子で優勝した中村まりん

 男子決勝は前回5年生ながら2、3位で表彰台に上がった奥畑成(なる)と斎木猛斗(たけと)が上位を争った。第2課題、うまく反動を付けられず他5人がゾーン取りすらままならなかった状況で予選1位の奥畑が一撃する。今度は斎木が最終課題の強度の高いピンチホールド2つを攻略して同課題2人目の完登かつ一撃。暫定首位に浮上したが、しかし奥畑も一撃してみせ、全完登で金メダルに輝いた。

5・6年男子で優勝した奥畑成

 表彰式でマイクを持った伊東氏は、「この身長でいけるかな?という距離のある課題など、全カテゴリーでだいぶ攻めた内容にセットしたが、子どもたちがそれを乗り越えてくれた。あっという間の時間で、すごく楽しませてもらった」とコメント。野口氏は「最後まで勝敗がわからない熱い登りを見せてくれてありがとうございます」と感謝を伝えると、今年で大会を卒業する6年生に向けて「すぐに世界ユース選手権やW杯に出られる年齢になる。ここからの3、4年は本当にあっという間なので、これからも楽しく頑張ってもらえたら」とエールを送った。優勝した子どもたちに話を聞くと、「オリンピックで金メダルを獲りたい」「世界で活躍したい」とそれぞれが大きな夢を見据えていた。

 今大会の模様は「LIVE-Link」のYouTube公式チャンネルで後日配信される他、CS放送テレ朝チャンネルで12月11日12時から放送される予定。

野口啓代コメント


「昔はスラブやコーディネーションがなく、いかに悪いホールドを持てて距離を出せるか、といったよりシンプルなものだったが、今の子どもたちは登り方を使い分けていて、バランスよくトレーニングしている。勝負課題を登り切れた子が優勝という展開が多く、理想的なリザルトの出方で、セッターも距離間を作るのが上手だったと思う。子どものうちから競いたいのか、それとも楽しく登りたいのかそれぞれ考えはあると思うが、1つの選択肢として全国で一番強い小学生を決めるというこのような大会があることは素晴らしい。一番大切なのはケガをせずに長く楽しくクライミングを続けること。今日はみんな仲良く登っていて、優勝よりもクライミングが好きだという気持ちを感じられたので、私もうれしかった」
 

3・4年女子表彰台


1位:長島 永和(ながしま・はるか)/4年/3t4z 3 6
2位:海野 奈花(うみの・なな)/4年/3t4z 3 8
3位:為則 咲帆(ためのり・さきほ)/4年/3t4z 4 5
 

長島永和(優勝)コメント
「去年は決勝まで残れずとても悔しかったので、来年は優勝するという目標を立てて取り組んできました。予選通過と優勝ができてよかったです。将来の目標はオリンピックで優勝することです」

3・4年男子表彰台


1位:田中 陽(たなか・はる)/4年/4t4z 6 6
2位:原 天馬(はら・てんま)/4年/4t4z 7 6
3位:上田 大志(うえだ・たいし)/4年/3t4z 3 9
 

田中陽(優勝)コメント
「自分の良い登りができたので良かったと思います。決勝はダイナミックな課題が多くて、得意系でした。好きな選手は苦手が少なそうな藤井選手です。世界で活躍して、みんなに知ってもらえるような選手になりたいです」

5・6年女子表彰台


1位:中村 まりん(なかむら・まりん)/6年/4t4z 10 10
2位:原 菜都美(はら・なつみ)/6年/3t3z 4 3
3位:池田 心春(いけだ・こはる)/6年/3t3z 5 5
 

中村まりん(優勝)コメント
「今まで決勝に残れなかったり、2位や3位になったりしちゃうことが多かったんですけど、今回1番になれてすごくうれしいです。ボルダリングはいろんなグレード感があるし、課題の得意不得意が人それぞれなので、仲間たちと支え合って頑張れるところがいいと思います。野球やサッカーみたいに毎回同じことをやらないので、いろんなことを楽しめます。目標は森秋彩選手で、好きなクライマーは野口啓代さん。夢はオリンピックで1位になることです」

5・6年男子表彰台


1位:奥畑 成(おくはた・なる)/6年/4t4z 7 4
2位:斎木 猛斗(さいき・たけと)/6年/3t3z 3 3
3位:中山 拓弥(なかやま・たくみ)/6年/2t3z 4 5
 

奥畑成(優勝)コメント
「全完登できてうれしいです。3課題目がすごく難しくて、手こずったんですけど、それ以外は順調にできたのでいいと思いました。好きな選手は緒方良行選手です。僕と同じパワークライマーですごいなと思います。今後の目標は、まずは世界ユース選手権に出て優勝することです」

※順位表は左から順位、氏名、学年、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

配信・放送予定

「LIVE-Link sports」YouTube公式チャンネル
CSテレ朝チャンネル(12月11日12時~)

「Ground Art Wall presents 第5回ボルダリング小学生競技大会」公式サイト

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 窪田亮

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