オンライン会見した(左上から時計回りに)楢崎智亜、野中生萌、藤井快、森秋彩の4人

ボルダリングジャパンカップ開催を前に4選手が会見 野中生萌は“男子化計画”を遂行中

 三重県四日市市で2月5日から開催される第17回ボルダリングジャパンカップ(以下BJC)まであと2日に迫る中、楢崎智亜、藤井快、野中生萌、森秋彩の有力選手4人がオンライン記者会見を行い、新年初戦への意気込みなどを語った。

 会見の冒頭には、前回大会で男子2位だった楢崎智亜が登場。はじめに野口啓代との結婚で生じた変化を問われると、「(野口が競技を引退したことで)一緒に登ってトレーニングする機会が少なくなり、ちょっと離れて僕を見ることが多くなったことで前とは違う意見をもらうようになった」と回答。BJCの目標については「優勝」としたものの、「明確にこれだという目標を持って挑むというよりは、五輪や世界選手権を通じて感じたことをこの冬にトレーニングしてきたので、そこをしっかりと出していければ」と話した。重点的にしているトレーニングは「苦手をつぶすこと。スタティックな動きや、“安全なクライミング”を磨くこと」だという。

 「これほど大会直前に調子が良いことは中々ないので、逆に不安です」と話したのは、王座防衛の懸かる藤井快。楢崎や昨年のW杯年間王者・緒方良行などライバルは多いが「基本的には僕自身との戦いになる。他にどんなに強い選手がいても、結局は自分のパフォーマンス次第。他人の結果はコントロールできないので、僕は自分がコントロールできる範囲を精いっぱい頑張るだけ」と自分自身との戦いにフォーカスしていることを強調した。BJCで男子唯一の複数回優勝を記録している藤井は、今大会でも1位となれば5度目の頂点となる。

 前回女王で、さらにBJCの翌週に行われる第35回リードジャパンカップ(以下LJC)でも連覇の期待が懸かる森秋彩は「一番の目標は両方の大会で優勝すること」と2年連続での2冠を目指す。2週連続でのジャパンカップに挑むにあたっては、「最近のリード課題にはボルダリングで出てくるようなダイナミックな動きがあるので、BJCに向けたボルダリングの練習でリードのパフォーマンスも上げられるように工夫している」と努力を続けてきたという。

 2年後のパリ五輪出場を目指す森が弱点に挙げたのは「ボルダリングでのコーディネーションやランジなど体全体のパワーを使う課題」。以前は得意な保持系課題に打ち込んだり、リードの持久力トレーニングに時間をかけたりしていたそうだが、最近はコーディネーションを中心に、これまでは避けてきたような課題に積極的に取り組んでいるという。ジャパンカップ2連戦では「苦手意識をどんどんなくしていきたい」と話した森の進化にも注目したい。

 最後に姿を見せたのが、髪色の一部を紫に染め上げた野中生萌。大会前に髪色を変えることは彼女のルーティンの一つとして確立されている。その中で今回は「自分の中で(東京五輪のあった)2021年と2022年を切り離したい想いがあったので、(以前の)オレンジ色から変えた」のだという。「五輪が終わってから、ありがたいことに表彰していただく機会がとても多かった。ただ、いつまでも過去の結果にすがりついていたくないという思いもある。それはいったん終わったものとして受け入れて、次に向けて再スタートを切っているという気持ちを作り出したかった」と、“次への挑戦”を意識して「切り離したい」という考えに至ったことを説明した。

 さらには“男子化計画”という驚きの言葉も飛び出した。「五輪後、どういうふうに自分がなりたいか想像を膨らませた時、頭に浮かんだのが男子選手。『かっこいいな』とか『強くてすごいな』と思わせるクライミングを私は男子選手でイメージできたので、『男子化計画』を一つの目標にしています(笑)」とし、これまでのフィジカルトレーニングは継続しつつ、その中で「男性的な強さを目指したエッセンスも取り入れている」のだとか。パリでの金メダル獲得を目標の一つとしている野中のさらなる飛躍が楽しみだ。

 注目の高まるBJCは、5日に男女予選、6日午前に予選上位20人での男女準決勝、同日午後にその上位6人での男女決勝が行われる。現時点では有観客が予定されている。

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取材・文 編集部

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