劇的な幕切れ!「MOUNTAIN HARDWEAR CUP 2019」が開催

 20日、「MOUNTAIN HARDWEAR CUP 2019」が神戸市の複合商業施設「ミント神戸」屋上にあるクライミングジム、グラビティリサーチ ミント神戸にて開催された。

 アメリカ・カルフォニア州生まれのクライマーズブランド「マウンテンハードウェア」により昨年誕生したこの大会。トップロープ形式かつ速さが求められる珍しいフォーマットで、中でも同一ルートを隣り合わせで登るデュアル方式の決勝は新感覚の対戦型クライミングコンペとして注目を集めた。

関連記事:強さと速さを競う、新しいショーコンペ「MOUNTAIN HARDWEAR CUP 2018」が開催

 雨天により1日順延での実施となったが、昨年を上回る数の参加者が来場。開会式では2年連続で大会プロデューサーを務める一宮大介に加え、将来が期待される若手クライマー・青柳未愛、女性ルートセッターとして活躍する水口僚の2人が新たなゲストとして登場した。

 晴天のもとでスタートした予選は、一番手の選手から多数の声援が飛び交い、さっそくの盛り上がりをみせた。

昨年に続き、マウンテンハードウェアのサポートクライマーである一宮大介が大会をプロデュース。

(左から)ゲストとして登場した野村英司、青柳未愛、水口僚。水口はセッターとして大会に協力した。

あらかじめTOPにロープが確保されているトップロープ形式で大会は行われる。ロープのクリップが不要で、壁の高さも約10mのため、ロープクライミングが未経験の方でも参加しやすい。

予選の試技は2本で、制限時間は3分。各カテゴリーで上位4名が決勝に進出した。

即興の“シンクロ”ムーブで会場を沸かせた一宮と小西大介のデモンストレーション。

会場内のブースではコク深いアウトドアコーヒーやクラフトビールなどが無料で振舞われた。

カナダ・スコーミッシュに遠征した際のエピソードを披露するトークショーも同時開催。一宮と野村から「岩場に行くことで色々な発見をしてほしい」というメッセージが伝えられた。

 予選の上位4名が決勝ラウンドに進出し、各カテゴリーで優勝者が決まっていくなか、最上位のエキスパートカテゴリーは男女でドラマチックな結末となった。

 エキスパート女子の優勝決定戦には2年連続での進出となった菊川花恋と、2018年のユース日本代表・抜井亮瑛の妹、美緒が勝ち上がり、13歳の同学年対決となった。

 2人は抜きつ抜かれつのデッドヒートで、1位を決める戦いに相応しいレースを繰り広げる。最後はほぼ同時のゴールとなり、まさかのビデオ判定に。審議の結果、わずかの差で抜井が上回り、菊川に敗れ準優勝に終わった先月のJOCジュニアオリンピックカップの雪辱を果たした。

ライトアップされた中で始まったエキスパートカテゴリー決勝。ほぼ同時にゴールした同学年対決は抜井に軍配が上がった。

 男子では、こちらも2年連続で優勝決定戦へと駒を進めた抜井亮瑛と、ゲストクライマー野村の対戦に。互角の戦いとなったレースは野村が一手先をリードしていたが、今年のスピードジャパンカップで当時15歳ながら3位に輝くなど、速さにも定評がある抜井が最終面に入り逆転。そのままTOPホールドにたどりついた。

 しかし、TOPを掴みに行くと同時に野村側に視線を移したことが災いしたのか、まさかの落下。大きく頭を抱えた抜井を尻目に野村がゴールし、勝利の雄叫びを上げた。

 昨年好評だったDJによる音楽や照明によるライトアップはそのまま継承し、生ライブなど新たな取り組みでさらなる盛り上がりをみせた2019年のマウンテンハードウェアカップ。来年の実施もいまから楽しみだ。

エキスパート男子の優勝決定戦は昨年のファイナリスト抜井(手前)と野村の対決となった。

先にTOPにたどり着いたのは抜井。

しかし、まさかの落下。優勝賞金15万円は野村の手に渡った。

大会に華を添えた「VIN VIN VEANS」によるライブ演奏。


 
 

【一宮大介コメント】(大会プロデューサー)
「素敵な音楽があって、綺麗な夜景が見られて、僕もすごく楽しめました。見えないところで手伝いいただいたスタッフの方に感謝したいです。ありきたりなコンペじゃなくて、『ちょっと変わってるな』って言われるような、何か印象に残るコンペとして続けていきたいですね」


【抜井美緒コメント】(エキスパート女子優勝)
「スタートのカウントダウンが緊張して、気持ちを作るのに必死でした。登っている時に(相手が)チラチラ目に入ってきて、抜かされたりもしたので最後は焦りました。優勝がわかったときはすごく嬉しかったです。来年もまた参加したいです」


【野村英司コメント】(エキスパート男子優勝)
「とにかく嬉しいです。去年途中で落ちてしまって、今回も危ない瞬間があったんですけど、なんとか持ち切れました。速さを競うので目に見えてわかりやすく、面白い大会だという印象が強いですね。昨年に比べても盛り上がったと思います」


【青柳未愛コメント】(ゲストクライマー)
「どんな大会なんだろうなって不安な気持ちもあったんですけど、まず雰囲気がすごく良くて、心の底から楽しめました。来年はスピードを速くしてリベンジしたいと思います」


【水口僚コメント】(ゲストセッター)
「初めてのフォーマットだったので不安もありましたが、盛り上がってホッとしています。簡単すぎて本当のスピード勝負になってしまっても良くないので、しっかりとクライミング要素も入れつつ、セットをしました。普段のルートコンペよりも、登らせる意識で作っているのでグレードは少し落としました。毎年みんなが集まる恒例のイベントになってほしいなと思います」

<リザルト>

[エキスパート女子]
1位:ヌクイ ミオ/TOP(27.71秒)
2位:キクカワ カレン/TOP(27.79秒)
3位:アオヤギ ミア/TOP(34.26秒)

[エキスパート男子]
1位:ノムラ エイジ/TOP(23.99秒)
2位:ヌクイ リョウエイ/Fall
3位:タニイ カズキ/TOP(66.78秒)

[マスター男子]
1位:フルカワ エイジ/TOP(28.49秒)
2位:ウメバチ ヒロツグ/TOP(37.78秒)
3位:ナカムラ コウダイ/TOP(66.65秒)

[ミドル女子]
1位:モリモト メイ/TOP(42.07秒)
2位:ムラサワ タオ/Fall
3位:カタギリ ユウナ/Fall

[ミドル男子]
1位:マキムラ リョウタ/TOP(29.67秒)
2位:タケウチ ユウジロウ/Fall
3位:タイラ ジュンヤ/Fall

[ビギナー男女混合]
1位:ミウラ タクマ/TOP(30.88秒)
2位:ノマ ミナミ/TOP(38.37秒)
3位:スガワラ タロウ/TOP(46.35秒)

[キッズビギナー男女混合]
1位:ミズタニ セイ/TOP(29.90秒)
2位:カナオカ アオイ/TOP(33.52秒)
3位:モリシタ ユメ/TOP(39.69秒)

※左から氏名、到達高度、完登時間
※1・2位はビッグファイナル(1位決定戦)、3位はスモールファイナル(3位決定戦)の記録

MOUNTAIN HARDWEAR CUP 2019 公式ページ

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 MOUNTAIN HARDWEAR CUP 2019

back to top