FEATURE 148

独占インタビュー

ヤンヤとロマン 2人は再び頂を目指す


東京五輪で女子複合を制し、スポーツクライミングの初代金メダリストに輝いたヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)。その時以来だという日本に滞在中の彼女と、ともに来日したコーチのロマン・クライニク氏に、2人が参加したユースクライマー向けトレーニングキャンプ「THE 18」(10月15日開催)終了後、話を聞いた。

先ほどまで、ユースクライマーを対象とするボルダリングのトレーニングキャンプ「THE 18 – TO THE NEXT LEVEL –」(株式会社8611主催)に参加されていました。書類選考を通過したユース選手に、各分野に精通したコーチが指導するイベントで、クライニクさんは特別ゲストとしてアドバイスを送りました。
クライニク 良くオーガナイズされた素晴らしいイベントでした。参加できてハッピーです。カツ(発起人の宮澤克明氏)に誘ってもらい、本当に良かった。このようなイベントは若い世代にとってとても重要な経験となるでしょう。
 

「THE 18」でのトークセッションの様子

 
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ガンブレット選手は最後のトークセッションでサプライズ登場しました。
ガンブレット イベントをすべて見ていたわけではないけれど、異なるコーチから技術を教わることは、とても良い経験になるはず。トレーニングでありながら、周りのみんなと一緒に登るということも、若い彼らにとって良い時間となったのではないでしょうか。

スロベニアにこのようなイベントはありますか?
クライニク ありません。なぜないのかわからないくらいです(笑)。とても良いアイディアなので、ぜひスロベニアでもやりたいし、その時にはカツにも来てほしいですね。

今回の滞在の目的と期間は?
ガンブレット トレーニングのためではなく、“クライミングバケーション”として2週間の予定で滞在しています。天候の良くない日が続きましたが、明日はようやくアウトドアへ登りに行けそうです(笑)。

クライミング以外で印象に残った日本でのエピソードは?
ガンブレット オリンピック以来の日本なので、とてもスペシャルな感覚がありますね。そもそも日本が大好きなので、いられるだけで幸せ。食事が美味しくて、特にスシを愛しています(笑)。

2人の師弟関係はいつから始まったのですか?
クライニク 2015年にスロベニア代表のコーチをしていた時、彼女が代表チームに参加してきたのがきっかけです。19年からはほとんど毎日指導するようになりました。
 

東京五輪で金メダルを獲得し、涙の抱擁を交わした2人(写真:© Dimitris Tosidis/IFSC)

 
ガンブレット選手にとってクライニクさんはどのようなコーチですか?
ガンブレット トレーニングプランの組み立ては当然のことながら、人として尊重してくれた上で、何が大切なのかを考えてくれる。指導においても弱点をすぐ見つけてくれます。これ以上ない、世界一のコーチだと思っています。

東京五輪の約1カ月後に行った本誌のインタビュー(#021/2021年9月発行)では、今後について「あまり考えていない」と話していました。
ガンブレット 今はパリ五輪での金メダルが目標です。当時インタビューを受けた時は五輪の直後ですべてのエネルギーを使い切っていました。しかもゴールである金メダル獲得を成し遂げたばかりだったので、特に次の目標は考えていなかったんです。でも、「常にベストでいたい」という気持ちは変わりません。東京五輪が1年遅れたことで、2024年のパリ五輪はすぐにやってきます。東京五輪に臨む際と同じ状況に再び自分を持っていって、良い準備をしていきたいですね。

東京五輪の時と同じモチベーションで、再び金を獲りにいくと?
ガンブレット 金への“パッション”はまったく同じです。でもパリでは東京での経験を生かして戦えるので、そこは少し変わってくると思います。
 

2022年はリードW杯通算5度目の年間女王に輝いたガンブレット。五輪後も圧倒的な強さを保っている(写真:© Dimitris Tosidis/IFSC)

 
最後に、今回はユースクライマー向けのイベントでしたが、クライミングがうまくなりたいと願うすべてのクライマーに向けてメッセージをお願いします。
クライニク ハードなトレーニングをすること、そのプロセスを信じること、そしてそれらを楽しむこと。この3つを信じ続けていけば、何かしらのことを達成できるはずです。
 
ガンブレット 私にとって「ハードなトレーニング」と「楽しむこと」は常にイコール。同じことです。楽しめないと厳しいトレーニングはできないし、厳しいトレーニングをしないと楽しくなれないんです。この2つを常に1つのものとして捉えること。それがみなさんへのメッセージです。

CREDITS

インタビュー・文 編集部 / 写真 8611 Inc. / 協力 B-PUMP荻窪

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PROFILE

ヤンヤ・ガンブレット (スロベニア)

1999年3月12日生まれ、スロベニア出身。20代にして「G.O.A.T.」(史上最高)と称えられる稀代のクライマー。15年のシニアデビュー以降、天性の身体能力を生かし数々の優勝を収め、19年世界選手権では前人未到の同一大会3冠(ボルダリング、リード、コンバインド)を達成。迎えた東京五輪では下馬評通りの強さで初代女王に輝いた。

PROFILE

ロマン・クライニク (スロベニア)

1975年7月19日生まれ、スロベニア出身。20年以上の指導キャリアを持つ名伯楽。18年にオーストリア代表チームのヘッドコーチに就任すると、⾃国開催の世界選⼿権で3つの⾦メダルを獲得して⼿腕を発揮。19年からはガンブレットを二人三脚で指導し、彼女の東京五輪優勝に大きく貢献した。

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