最後のリードW杯出場で銅メダルを獲得した野口啓代

野口啓代が自身最後のリードW杯で3位表彰台/リードW杯2021第1戦 インスブルック大会

 クライミングW杯2021のリード第1戦決勝が現地時間25日(日本時間26日)、オーストリアのインスブルックで行われ、日本の野口啓代が女子3位に入り、この種目では自身最後の出場となったW杯で表彰台に上がった。

 女子決勝には、日本から野口、野中生萌が進出。ヴィータ・ルーカン、ルチカ・ラコヴェッチ(ともにスロベニア)を除くファイナリスト8人中6人が東京五輪代表勢となった。五輪を担当するルートセッター陣が手掛けた決勝ルートは、要所要所に距離のあるパートが設けられ、その攻略に多くの選手が苦しんだ。

 先頭を登る野中は序盤のランジに成功するも、次の難所となった高度22からの距離のある一手で指先がかからず、22+で競技を終える。続けて野口が登場すると、野中の落下部を突破。その後の腕に大きな負荷がかかるパートで体力を消耗し、高度33+の成績で後続の結果を待った。

競技を終えた野口。(写真:JMSCA)

 ヴィクトリア・メシコワ(ロシア)が22+、ルーカンが19+、ラコヴェッチが13+で、上部に到達する選手は現れなかったが、ボルダリングW杯で2戦連続銅メダル獲得中のブルック・ラバトゥ(アメリカ)が安定した登りを披露。高度40をマークして、野口を抜き暫定首位に立った。

 ラウラ・ロゴラ(イタリア)がムーブに迷うなどして手間取り、さらにランジに失敗して高度13+にとどまると、最後にヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が登場。東京五輪の金メダル有力候補は体幹の強さを発揮して身体への負荷を抑えながら高度を上げていくと、上手くレストも取り入れて時間をフルに使い、ゴール前のランジに成功。残り5秒での完登となった。

 これでガンブレットが1位、ラバトゥが2位となり、野口は3位。東京五輪での競技引退を表明している野口が、五輪前最後の出場となったW杯、そのリードを表彰台で締めくくった。野中も自己最高タイの5位入賞を果たしている。

女子表彰台=(左から)ブルック・ラバトゥ、ヤンヤ・ガンブレット、野口啓代。東京五輪代表勢が表彰台を独占した。(写真:JMSCA)

 一方、楢崎智亜が9位で惜しくも敗退し、樋口純裕が日本勢で唯一の出場となった男子決勝は、ベテランのステファノ・ギソルフィ(イタリア)が先頭にしてTOPに迫る高度47をマーク。後続にプレッシャーを与えることに成功する。2番手の樋口は高い持久力で高度38への一手を止め、39には届かなかったが、38+と粘りのクライミングを見せた。

 五輪代表のアレクサンダー・メゴス(ドイツ)は37+で樋口に及ばず、サッシャ・レーマン(スイス)は38+で樋口と同スコアに達すると、準決勝3位のヤコブ・シューベルト(オーストリア)が一気に47まで上昇。TOPホールドに手を伸ばしたため、ギソルフィを上回る「+」が付いた。

 最後に登場したのは予選、準決勝首位のアダム・オンドラ(チェコ)。このラウンドでも好成績が期待されたが、序盤でスリップを2度犯し、1度目は耐えたが2度目で落下。高度17でまさかの決勝最下位に終わった。

 最終的に、地元オーストリア出身のシューベルトが優勝、ギソルフィが2位、レーマンが3位に入り、樋口は4位。レーマンと同スコアだった樋口は準決勝の成績で劣るため、わずかに表彰台には届かなかったが、国内屈指の実力をW杯決勝の舞台でもアピールした。

 男女とも東京五輪代表勢が制した2021年のW杯リード第1戦。現地時間26日の同会場では、昨日予選を終えたボルダリング第4戦の準決勝、決勝が行われる。

<決勝リザルト>

[女子]
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/TOP
2位:ブルック・ラバトゥ(USA)/40
3位:野口 啓代(JPN)/33+
4位:ヴィクトリア・メシコワ(RUS)/22+
5位:野中 生萌(JPN)/22+
6位:ヴィータ・ルーカン(SLO)/19+
7位:ラウラ・ロゴラ(ITA)/13+
8位:ルチカ・ラコヴェッチ(SLO)/13+
――――――
9位:伊藤 ふたば(JPN)※準決勝進出
13位:阿部 桃子(JPN)※準決勝進出
28位:柿崎 未羽(JPN)

[男子]
1位:ヤコブ・シューベルト(AUT)/47+
2位:ステファノ・ギソルフィ(ITA)/47
3位:サッシャ・レーマン(SUI)/38+
4位:樋口 純裕(JPN)/38+
5位:アルベルト・ヒネス・ロペス(ESP)/37+
6位:アレクサンダー・メゴス(GER)/37+
7位:ルカ・ポトカ(SLO)/27+
8位:アダム・オンドラ(CZE)/17
―――――
9位:楢崎 智亜(JPN)※準決勝進出
10位:百合草碧皇(JPN)※準決勝進出
11位:藤井快(JPN)※準決勝進出
20位:吉田 智音(JPN)※準決勝進出
24位:原田 海(JPN)※準決勝進出
41位:天笠 颯太(JPN)
80位:田中 修太(JPN)

※左から氏名、所属国、決勝成績(到達高度)
※同高度の場合は前ラウンドの成績を適用するカウントバックで順位を決定

国際スポーツクライミング連盟/インスブルック大会特設ページ(リザルト詳細などはこちらから)

CREDITS

編集部 / 写真 Marco Kost/Getty Images

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