FEATURE 78

LJC2020 注目選手インタビュー

平野夏海 女子リード界の次世代スター

LJCは一年で一番大事な大会です

新型コロナウイルス感染拡大防止措置による2度の延期を経て、2020年8月9日〜11日に岩手県盛岡市で開催される第33回リードジャパンカップ(LJC)。今大会、女子注目の若手選手は、伊藤ふたばや森秋彩だけではない。国際大会で結果を残す昨年3位の18歳、平野夏海も優勝候補の一人だ。

※本記事は「第33回リードジャパンカップ」大会公式プログラムの掲載内容から一部抜粋、再構成したものです。
 
 

出場3戦目で決勝進出。2018年初参戦のW杯から得たもの

 

2018年に初めてW杯に参戦され、出場3戦目となった同年クラーニ大会(スロベニア)では決勝に進出しました。以降、数々の大会で好成績を収めていますが、その要因をどう見ていますか?

「初めてのW杯は本当に楽しくて、モチベーションがすごく上がりました。それまで海外のトップ選手を生で見ることはできなかったんですが、W杯を戦う中でそれが叶い、いろんな選手からじかに学ぶことで、あらためて自分も強くなりたいと感じました。それから練習内容を少しずつ変えていったことが要因にあると思います」

具体的にはどんな部分に学びがありましたか?

「海外選手はためらいがないんです。自分の場合は一呼吸おいて登っているタイミングでも、もっとテンポが良いというか。今までの自分の登りとはまったく違う印象がありました」

練習内容の変化というのは?

「W杯に出場するにあたって、周りの人から『(リードでも)ボルダリングの能力が大切』と言われ、少しずつボルダリングの練習を増やしていました。でも(W杯初戦の)ブリアンソン大会に出場してみると、思っていた以上に(ホールド間の)距離があるし、求められるダイナミックなムーブも自分はまだまだで、もっとボルダリングの練習が必要なんだということを肌で感じました。その後はトレーニングの大部分をボルダリングに充てて、傾斜のある壁を中心にいろいろなムーブの課題を登るようにしています」

その努力の甲斐あって、2019年はBJC(ボルダリングジャパンカップ)で4位、そしてLJCでは3位で表彰台に上がりました。前回大会を振り返ると?

「それまで決勝に進んだことがなく、ずっと残りたいと思っていました。まさか表彰台に乗れるとは思っていなかったんですけど、予選と準決勝を1位通過できたので、あとから考えると優勝したかったという思いもありました。決勝ではプレッシャーも感じましたが、いろんな大会に出て経験も積んでいたので潰されることはありませんでした。自分の出番が来た時は『やってやるぞ』という感じで、完登したいと思っていましたね。完登できなくて悔しかったです」

 

2018年以降めきめき頭角を現すと、2019年のLJCで野口啓代、森秋彩に次ぐ3位となり、シニア大会初の表彰台に上がった。

 
 

自分は負けず嫌い。「誰よりも努力したい」

平野選手は、ご自身をどのような選手だと感じていますか?

「負けず嫌いです。まだまだボルダリングの力も足りていませんし、身長が低いこともあって、誰よりも努力したいと思っています」

平野選手のクライミングのスタイルを説明するとしたら?

「ダイナミックで、観客にかっこいいと言ってもらえるような登りがしたいと思っています。持久力はある方だと思うので、ルートは長ければ長いほど得意です。憧れの選手はいるんですけど、自分の登りを貫いていきたいですね」

憧れの選手というのは?

「韓国のキム・ジャイン選手です。小さい頃からW杯などの動画を見ていて、意識してきました。すごく安定感があって見ていてハラハラしないというか、躊躇(ちゅうちょ)することがなくてしっかり決めるべきところを決めてくるのがかっこいいと思います」

平野選手はリードを最も得意としていますが、好きな種目もリードですか?

「はい。登れた時の達成感がすごく大きいです。一手一手、自分で答えを出していく時間が長くて、どんどん新しいことをしている感じがして楽しいですね」

先ほど話に出ましたが、ご自身の身長(およそ152cm)についてはどう捉えていますか?

「高くなれるならなりたいです(笑)。でも、身長が小さいと大変な部分はありますが、背が高くないぶん楽しいと言ったら変ですけど、工夫して考えることもできますし、この身長だからこそできるムーブもあるんです」

同学年に伊藤ふたば選手、菊地咲希選手、一つ下に森秋彩選手、谷井菜月選手、松藤藍夢選手など、同世代には全国的に結果を出している選手が多数います。平野選手にとって、彼女たちはどのような存在ですか?

「ライバルが沢山いると、同じ世代の中で日本代表に選ばれることは大変です。勝ちたい気持ちもあります。でも一緒に登っていて楽しいし、学べることも多いので、この世代で良かったなと思います」

 

特に仲が良いのは菊地咲希選手で、幼稚園が同じで、小学4年生でクライミングを始めた時から2人で登っているとか。今でも週の半分ほどは一緒に登っているそうだ。

 
 

LJCは一番の目標。「声援がないのは悲しいけど…」

本来3月に実施される予定だったLJCですが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期、無観客開催となりました。

「延期を聞いた時は残念でした。コンディションを仕上げていたので、悔しさもありましたね。自粛期間中は大会遠征ができなくなってしまい、これまで普通だったことへのありがたさを感じました。無観客開催については、落ちそうな時に声援があると頑張れたりするので、それがないのは少し悲しいですね」

平野選手にとって、LJCとはどんな大会ですか?

「自分の中では一年で一番大事な大会です。私はリードをやっている時が一番楽しくて、好きでもあるし、一番得意でもあるリードのLJCという大会で結果を残すことが一番の目標です」

最後に、今大会の目標を教えてください。

「まずは確実に予選、準決勝を通過すること。決勝を含めて全部の課題を完登したいです」

 

 
第33回リードジャパンカップ 特設サイト

CREDITS

インタビュー・文 篠幸彦&編集部 / 写真 窪田亮 / 協力 JMSCA

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PROFILE

平野夏海 (ひらの・なつみ)

2002年7月29日、東京都生まれ。国士舘高等学校在学。2018年に初参戦のリードW杯で決勝進出を経験し、アジア選手権では4位に。2019年もLJC3位、世界ユース選手権コンバインド優勝など実績を重ね、将来を渇望される。

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