FEATURE 53

独占インタビュー

ロマン・クライニク 強国の敏腕コーチが語る「金」への道


世界選手権2018で金メダル3つを獲得したのがオーストリアである。本誌は2月14日、日本代表との合同合宿で来日した同国チームを直撃。まずは、国内のクライミング事情や五輪に向けた強化方針など貴重な話を聞かせてくれたヘッドコーチのインタビューをお届けしよう。

※本記事の内容は2019年3月発行『CLIMBERS #011』掲載当時のものです(インタビュー収録日:2019年2月14日)。
 
 
スポーツクライミングがオリンピック追加競技に決定した時はどう感じましたか?

「私はコーチを始めて20年くらいになりますが、当初から競技における一番の目標は、オリンピック競技に選ばれるということでした。その検討が始まったと聞いた時はとても嬉しかったですね。ただしコンバインドというフォーマットには、五輪競技として採用する妥協があったと考えています。本当はそれぞれを別々にできればよかったのに、というところかな(笑)」

オーストリアチームの強化方針は?

「昨年から3種目それぞれに力を入れています。バランス良くという感じですね」

オーストリア人選手の特徴、強みとは?

「種目でいえば、ジェシカ(・ピルツ)やヤコブ(・シューベルト)がそうであるように、リードは世界で最も優れていると言えるでしょう。ただしボルダリングの力はまだこれから。しかし幸運にも、我われにはインスブルック(世界選手権2018開催地)に非常に良いトレーニング施設があります。これを最大限に活用して、3種目の力を高めていければと考えています」

以前からオーストリアは強いクライマーを多数輩出しています。国を挙げて選手を強化する育成システムが整っているのでしょうか?

「まず連盟が組織としてしっかり機能しているということですね。インスブルックに素晴らしい施設ができたことで、選手育成の面でもやりやすくなったのは確かです。私はスロベニアの出身ですが、母国の状況を比較すると体制も施設もそれほど整っているとは言えません」

若手選手のスカウトなども?

「それは連盟が主導するというより、ローカルにあるたくさんのクラブがそれぞれ選手を育て、全国大会などに有力者を派遣しています。国中に優れたクラブがひしめいているんです」

ライバルだと考えている国は?

「日本、スロベニア、それとアメリカにも可能性がある。男子ではドイツもそうでしょう。日本にはアキヨ、ミホウ、フタバ、トモア、メイチ、ココロ……これ以外にも実力ある選手が非常にたくさんいますね。特にダイナミックさや柔軟性に優れた選手が多いと感じます」

日本代表チームの印象は?

「もともとボルダリングは強かったのですが、スピードもここ1 年でかなりレベルが上がったと感じています。弱点だと思われたリードもどんどん良くなっている。ただ、もちろん国内すべてのジムを見たわけではないのですが、日本にはリードウォールが十分にないように思います。日本代表チームは今年(1月)強化合宿でインスブルックを訪れましたが、我われの施設を見て何か感じることもあったのではないでしょうか」

オーストリアチームとして、東京2020オリンピックの目標を教えてください。

「もちろん金メダル。表彰台は絶対。女子も男子もです。東京に向けて、3種目すべてで最高の状態に持っていきたい。日本よりすべての面で優れることを目指していますよ(笑)」

CREDITS

インタビュー・文 編集部 / 写真 窪田亮 / 撮影協力B-PUMP荻窪店

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PROFILE

ロマン・クライニク (オーストリア代表コーチ)

1975年7月19日生まれ、スロベニア出身。以前はスロニベア代表チームを指導し、2018年にオーストリア代表チームのヘッドコーチに就任。自国開催の世界選手権2018で3つの金メダルを獲得とさっそく手腕を発揮した。

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