白石阿島、初のW杯は5位入賞。日本男子2名もファイナリスト入り/リードW杯2017第4戦 イタリア・アルコ大会

 8月25、26日、リードW杯2017第4戦がイタリア・アルコで行われ、女子はキム・ジャイン、男子はヤコブ・シューベルトがともに今シーズン初優勝。日本勢では緒方良行が4位、是永敬一郎が5位入賞を果たしている。

 女子予選には大田理裟、義村萌、森脇ほの佳、戸田萌希の4人が出場。そして今大会で天才少女・白石阿島がついにW杯デビュー。16歳にして自然の岩場、人工壁のコンペ双方で数々の実績を持つ次世代ヒロインのパフォーマンスに多くの視線が注がれた。白石は予選1ルート目を完登し、2ルート目も45の高スコアで9位通過。そのほかヤンヤ・ガンブレット、キム・ジャイン、アナーク・バーホーベンといった今季好調の3人が両ルートを完登。日本勢は義村が20位で、大田が24位で予選通過を果たす。

 準決勝は3番手に登場した大田が27+まで到達し、半数が終わった時点で3位につける好発進。そして18番手に白石が登場すると、大田をわずかに上回る28地点でフォール。その後もキム、ジェシカ・ピルツら実力者が28+でフォールしていく中、最後を登るヤンヤがただ一人33まで到達して1位通過。白石は8位となり、初のW杯でいきなりのファイナリストに。大田は終盤まで上位につけていたが、最終的に14位で準決勝敗退となった。

 決勝で先頭を切る白石は中盤の大きなハリボテを慎重に攻略すると、8つのボテが連続したエリアを登り切った32+でフォール。その後、5名が競技を終了した時点で白石は3位に。残すは今シーズン上位を常に争うキム、バーホーベン、ガンブレットの3名が控えており、初出場での表彰台の可能性は微妙な状況に。6番手で登場したキムは着実に高度を上げ、39に到達するとまだ余力を残しながらも時間切れで競技終了。暫定トップで表彰台圏内を確実にし、後続2人を待つ展開となり、白石の表彰台の可能性はこの時点で消滅した。続くバーホーベンは31+と高度を伸ばせず、最終競技者のガンブレットとキムで優勝を争う展開に。しかし、今季ここまで全勝のガンブレットは32地点から次の一手を掴みきれずにまさかのフォール。キムがそのままシーズン初の優勝を射止めた。

 男子予選は今季好調の是永敬一郎、波田悠貴のほか、ボルダリングW杯全戦を終えたばかりの緒方良行など8名の日本人選手が出場。そしてチェコのアダム・オンドラが今シーズンW杯初参戦。リードW杯年間王者2回、世界選手権2連覇中と圧倒的な実力を誇る王者が、どんなクライミングを見せるのかに高い注目が集まった。その予選ではオンドラが2ルートを完登し同率で首位通過。日本の是永は1ルート目を完登し2ルート目も45+という高いスコアで8位通過。これに波田も13位で続くと、緒方、樋口、野村、島谷の計6人の日本人男子が準決勝へと駒を進めた。

 準決勝は終盤に差し掛かり、傾斜が強くなってくる高度32を攻略できるかが決勝進出へのボーダーラインに。そこを乗り越えて32+を記録した是永、緒方がファイナリストに名を連ねることに成功。首位通過はドイツのアレクサンダー・メゴス。岩場をメインに活躍する24歳が、2位のオンドラの高度36を抑えて完登間近まで迫る44+を記録した。ワールドゲームズ銀メダリストの波田は26+でフォールし、準決勝敗退となった。

 決勝は一番手の緒方が傾斜が強くなってくるエリアで粘り強く34+まで登ると、続く是永は33+で掴めずに落下。次のシューベルトは緒方の34+を越えると残り42秒となり、そこからさらに高度を伸ばして39地点でタイムアップ。4番手のハネス・プーマン、5番手のトーマス・ヨハネスが26地点で早々とフォールし、緒方と是永が表彰台の可能性を残しながら最後の3人を迎えた。6番手のマックス・ルディジェは緒方の34を通過した時点で2分半以上もあり、余力も残していたが39を掴み損ねて38+にとどまった。7番手のオンドラもリーチを生かして素早く登りながらうまくレストを挟み、34地点をテンポよく通過。しかしルディジェと同様に39を掴むことができず、この時点で優勝の可能性が絶たれる。オンドラは声援を送る観客に感謝の手を向けると、会場はさらにねぎらいの拍手を送った。そして最後のメゴスがどれほど高度を伸ばすか期待されたが、序盤でランジに失敗しまさかのフォール。納得のいかないような表情を見せるメゴスを尻目に、昨季年間2位のシューベルトが今季初優勝に輝いた。

 白石とオンドラの出場で男女ともに話題性の高い大会となったアルコ大会。白石はデビュー戦ながら5位入賞と健闘し、オンドラは1年ぶりのW杯で2位表彰台とさすがの力を見せつけた。日本勢では男子で緒方、是永が惜しくも4位、5位で並んだが、上位3人にはわずかに届かず。しかし緒方はリードW杯初出場ながら決勝進出と、今後の活躍に期待が持てる結果となった。次回第5戦の開催地はイギリス・エジンバラで、約1カ月後の9月23、24日に開催される。

 

<男子・決勝>

1位:39 ヤコブ・シューベルト(オーストリア/26)
2位:38+ アダム・オンドラ(チェコ/24)※準決勝2位
3位:38+ マックス・ルディジェ(オーストリア/23)※準決勝3位
4位:34+ 緒方 良行(19)
5位:33+ 是永 敬一郎(21)
6位:26+ トーマス・ヨハネス(フランス/22)
7位:26 ハネス・プーマン(スウェーデン/19)
8位:11+ アレクサンダー・メゴス(ドイツ/24)
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11位:樋口 純裕(24)
23位:波田 悠貴(20)
25位:野村 真一郎(20)
26位:島谷 尚季(20)
27位:清水 裕登(21)
43位:沼尻 拓磨(24)

<女子・決勝>

1位:38 キム・ジャイン(韓国/28)※準決勝2位
2位:38 アン・ソフィー・コレル(スイス/21)※準決勝6位
3位:32+ ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア/18)※準決勝1位
4位:32+ ジュリア・シャヌルディ(フランス/21)※準決勝2位
5位:32+ 白石 阿島(アメリカ/16)※準決勝8位
6位:31+ アナーク・バーホーベン(ベルギー/21)※準決勝2位
7位:31+ ジェシカ・ピルツ(オーストリア/20)※準決勝5位
8位:20+ モーリー・トンプソン・スミス(イギリス/19)
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14位:大田 理裟(24)
26位:義村 萌(20)
42位:戸田 萌希(18)
45位:森脇 ほの佳(17)

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CREDITS

篠幸彦 / 写真 日本山岳・スポーツクライミング協会

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